サイハテノアトリエ

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【クリア後レビュー】『Ghost of Tsushima』を真面目に時代劇として見てはいけない。

どうも、実はオープンワールドゲームが大好きなまぷーです。

 

 今、『Ghost of Tsushima』が話題になっていて、「PS4最後の傑作」「ゲームオブザイヤー最有力候補」と各所で大絶賛されていますが、かくいう私も40時間ぐらいかけてクリアしました。

 

結論から申し上げますと、「とりあえず、やっとけ」と太鼓判を押せるぐらいに面白かったです。

 

その一方で、「どうせ海外スタジオが作った侍ゲームなんて面白くないでしょ?」「時代考証とか大してやってないんでしょ?」とタカを括っている人に対しては、

 

「いや、そこはマジで気にしなくて良いし、このゲームにおいて時代劇の要素なんてさほど重要じゃないよ」

 

と声を大にして言いたいので、本日はここを掘り下げてお話したいと思います。

 

※物語の核心部分に関するネタバレはありません。

 

 

違和感を感じる部分は確かにある。

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まず、はじめに素直にカミングアウトすると、違和感を感じる部分は確かにあるし、もっと言うなら、このゲームは時代劇として成立していないと感じます。

 

主人公は武家の跡取りになのに、名前が「仁(じん)」だし、それ以外にも「ゆな」「堅二(けんじ)」「典雄(のりお)」といった現代風の名前の登場人物が多いのも引っ掛かります。

この時代の平民の名前なんて、「吾作(ごさく)」とか「権平(ごんぺい)」とかじゃねーの?…と。

 

ここは、キャラを立たせるためにわざとそういう名前にしているんだろうけど、それにしたって、もっと他に付け方があっただろうし、日本人のキャラデザイナーだったら、日本人に違和感を感じさせない名前を付けられたんじゃないだろうか?という気がしないでもないのです。

 

百歩譲って名前については目を瞑るとしても、物語の本筋の部分が日本的な時代劇とはまるで違っており、そのせいで、「これは歴史創作なんですよ」と言われても、「ああ、そうなんですね」と素直に受け入れられない自分がいるんです。

 

詳しく話すとネタバレになってしまうので、少し話をボカします。

 

例えば、『暴れん坊将軍』にしても、『遠山の金さん』にしても、『水戸黄門』にしても、『忠臣蔵』にしても、どれも虚構(フィクション)が混ざっているけれど、「こんなもの時代劇ではない」と批判する人はおそらく居ないでしょう。

 

何故なら、そこで描かれているヒーロー像が、勧善懲悪という普遍的な枠組みの中で日本人の精神性や歴史上の人物に対して抱く羨望と上手くマッチしているからです。だから、史実と違うからといって、これを叩く人は居ないわけです。

 

だけど、主人公の境井仁は、「対馬に襲来した蒙古軍を撲滅する」という勧善懲悪の目的とは違うところで悩み苦しみ、葛藤し、最終的にはそこが大きなテーマとなっていきます。

 

単に蒙古と戦うだけだったら、「もしかしたら歴史の裏でそんな影の英雄が居たかもしれないね」と思えたかもしれませんが、それとは別の軸の悩みや葛藤を見せられることで、多くの日本人は「あれれ〜?」と違和感を覚えることになるわけです。鎌倉時代の武士がそんなことで悩むかな?…と。

 

一人のサムライにフォーカスした作品

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ただ、その一方で、制作スタジオであるサッカーパンチは黒澤監督作品を参考にしたと言っていますし、随所にその影響を見て取れます(「黒澤モード」というモノクロフィルムで撮ったかのような画面表示に変更することもできます)。

 

ここから推察するに、おそらく、史実がどうのこうのとか、日本人が抱く英雄像がどうのこうのという部分についてはいったん隅に置いといて、境井仁という1人のサムライの狂気とか孤独にスポットを当てたかったんだろうなと思うし、そういう作品だと思えば、最高にカッコいい剣劇アクションと評価することは可能だと思います。

 

つまり、この作品は、勧善懲悪を楽しむ時代劇的な面白さでもないし、大河ドラマ的な歴史大作を楽しむものでもなく、「用心棒」とか「椿三十郎」とか「座頭市」のような "侍のカッコよさ" を満喫するためだけのものだろうと思うのです。

 

そこを目指すために、「元寇」というテーマを借りただけであって(※)、少し乱暴な言い方をすれば、サムライのカッコよさを表現するためならば、「源平合戦」でも「明治維新」でも、時代のテーマは何でも良かったんじゃないかと思います。

 

(※)元寇対馬襲来は島を舞台にしているので、オープンワールドとの相性が良かったと見ることもできます。

 

そういう文脈で本作を見れば、この作品を真面目に歴史創作として捉える人は居ないだろうし、十分に日本人が満足できるクオリティには仕上がっていると思います。冒頭において「時代劇の要素はさほど重要ではない」と言ったのはそういう趣旨ですね。

 

「日本的な美しさ」+「オープンワールドの醍醐味」

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そこのフィルターさえ取っ払ってしまえば、中身は最高のオープンワールドゲームです(笑)

 

目新しい部分は特に何もないんだけど、アサシンクリードのような拠点制圧システム、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのような探索・収集要素、ウィッチャー3のようなサブクエ…等々、過去の名作の良いところを上手い具合に抽出して、そこに日本的な要素を加算したのが『Ghost of Tsushima』というゲームです。

 

戦闘の面白さはさることながら、目的地まで風が導いてくれるという独自システムも非常に斬新で、そのおかげで景色を堪能することができたし、日本的な美しさに触れ合うこともできました。

 

また、このゲームは、探索のストレスを最大限に除去しようと努めており、ロード時間は爆速だし、エリア内の蒙古の拠点を全て解放すれば、そのエリアの霧が全て晴れるという仕様になっているため、途中から探索が面倒臭くなるということもありません。

私が計測したところによると、マップの広さはたぶん30〜35㎢ぐらいで、最後まで探索を飽きずに遂行できるギリギリの広さを攻めてきたなという印象を抱きました。

 

少し残念だったところとしては、サブクエに分岐が存在しないところですかね。

 

例えば、とある村に武士を名乗る男がいて、よくよく調べてみたらそいつは武士じゃないことが判明したとします。こういう場合、ウィッチャー3では、

 

①その男を懲らしめて、村人に真実を話す。

②その男を見逃し、村人にも嘘を貫き通す。

 

というようにプレイヤーに選択肢が与えられて、サブクエの内容が分岐するんですが、『Ghost of Tsushima』ではそういう分岐がなく、その結果、「いや、俺だったらそういう行動は取らないな」というもどかしい気持ちが芽生えることもあります。

 

あくまでも境井仁という武士の生き様を追体験するだけのゲームだと割り切るべきですね。

 

あとがき

ともあれ、久しぶりに面白いオープンワールドゲームがプレイできて大満足でした♬

個人的には昨年PS4版が発売された「キングダムカム ・デリバランス」がものすごい微妙な作品だったので余計に。。

 

メインストーリーだけを淡々と進めていけば20時間ぐらいでクリアできるボリュームですので、忙しくてやり込んでいる時間がない人にもオススメの作品となっています。是非ご賞味あれ。

(もちろん、寄り道をしてゲームをやり込もうと思えば、50時間以上はかかるボリュームになっています)

 

<境井仁のオリジナルイラスト>

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